最近、生成AIにPowerPointの資料を作らせる機会が増えました。
少し前まで、AIに「この内容をスライドにして」と頼んでも、なかなか思ったような資料にはなりませんでした。そもそもAIが直接編集可能なPowerPointファイルを作ること自体が一苦労で、生成したとしてもレイアウトが崩れていたり、文字がはみ出していたり、デザインが微妙だったりしました。そこで、いろいろなツールを組み合わせたり、スライド生成サービスを試したりしてました。
ところが最近は、Claude Coworkに資料の内容と目的を伝えて「スライドにして」と頼むだけで、かなり実用的なところまで持っていける。
今回は、これまで自分が試してきた方法を振り返りながら、AIによるスライド作成がどう変わってきたのかのお話。
昔は「AIにスライドを作らせる」こと自体が難しかった
生成AIが文章を書くのは、かなり早い段階から得意でした。
「このテーマについて説明してください」「この文章を要約してください」「プレゼンの構成を考えてください」といったことなら、ChatGPTやClaudeに頼めばよかったのです。
しかし、そこから先が問題でした。
プレゼン資料として使うには、
- 何枚のスライドにするか
- 各スライドに何を書くか
- 見出しと本文をどう配置するか
- 図や表をどう配置するか
- フォントや色をどうするか
- PowerPointとして編集可能な形にする
といった作業が必要です。
つまり、
「スライドの内容を考える」ことと「PowerPointファイルを作る」ことの間に、かなり大きな溝がありました。
「良いスライドを作るプロンプト」がノウハウになっていた
この頃、生成AIにスライドを作らせるためのプロンプトの書き方そのものが、一つのノウハウになっていました。
単純に、
○○について10枚のスライドを作って
と頼むだけではなく、
- 誰に向けた資料なのか
- プレゼンの目的は何か
- 何枚にするのか
- 1枚あたりの情報量
- タイトルの付け方
- スライドごとの構成
- 図表の使い方
- 色やデザイン
- 全体のストーリー
などを細かく指定します。
さらに、
まず全体の構成を作ってください。
構成を確認してから、各スライドを作成してください。
のように、いきなり完成品を作らせず、構成→内容→デザインと段階を踏ませる方法もありました。
当時は「スライド生成プロンプト」「プレゼン資料生成プロンプト」といった情報がSNSやブログ、noteなどで盛んに共有されていました。
代表例が「まじん式」
その中でも特に印象に残っているのが、まじん式です。
まじん式は、単に「このテーマについてスライドを作って」と指示するのではなく、AIにスライド作成のためのかなり詳細なルールを与える方法です。
例えば、
- 入力された内容を分析する
- プレゼンの構成を考える
- スライドごとの役割を決める
- 情報に応じたレイアウトを選ぶ
- 図表などを組み合わせる
- 生成した内容をチェックする
といった工程をプロンプトに組み込んでいきます。
つまり、プロンプトそのものを「スライド生成プログラム」のように扱うわけです。
まじん式を実際に試した人による検証記事でも、Google Apps ScriptとGeminiを組み合わせ、AIに構成を考えさせながらGoogleスライドを生成する仕組みとして紹介されています。
さらに、まじん式を改造して、Googleスライドのテンプレートを適用するような試みも出ていました。
まじん式プロンプト v3を改造!GeminiでGoogleスライドテンプレート適用を制覇した記録
こうした情報を見ていると、当時の雰囲気がよく分かります。
「AIにスライドを作らせる」こと自体が、まだ一つの技術だった。
そのため、
良いプロンプトを作る
↓
AIに構成を考えさせる
↓
構造化されたデータを出力させる
↓
GASなどでスライドを生成する
という、かなり本格的な仕組みまで作られていました。
PowerPointをコードから生成する
プロンプトを工夫するだけでは、PowerPointファイルそのものをきれいに作るところまでは解決しません。
そこで登場するのが、PowerPointをプログラムから生成する方法です。
例えば、JavaScript/TypeScriptからPPTXを生成できる PptxGenJS や、PythonからPowerPointを操作できる python-pptx があります。
生成AIと組み合わせれば、
AIにスライドの構成を考えさせる
↓
AIにPowerPoint生成用のコードを書かせる
↓
コードを実行してpptxを生成する
ということができます。
これはかなり画期的でした。
画像として生成された「スライドっぽいもの」ではなく、PowerPointのテキストや図形として生成されるので、生成後に人間が編集できるからです。
ただし、実際にやってみると、それはそれで大変でした。
「タイトルが長すぎる」「この図形が重なっている」「文字が枠からはみ出している」「このスライドだけバランスがおかしい」といった問題が発生します。
結局、
「もう少し右に配置して」
「文字を小さくして」
「この図を中央にして」
という指示を何度も繰り返すことになります。
AIにスライドを作らせるためのプログラミングが必要だったわけです。
Marpを使う
もう一つ試したのが Marp です。
Marpは、Markdownからスライドを作るためのオープンソースのツールです。
「PowerPointをプログラムで生成する」というより、Markdownでプレゼン資料を書くという発想に近いものです。
例えば、
# 1枚目のタイトル
説明文です。
---
# 2枚目のタイトル
- ポイント1
- ポイント2
- ポイント3
のように書けば、それをスライドとして表示できます。
Markdownなので、生成AIとの相性も非常に良いです。
この内容をMarp形式のMarkdownで10枚のスライドにしてください
と頼めば、AIがスライドの構成と本文をまとめて生成できます。
MarpはHTMLやPDFだけでなくPowerPointにも出力でき、テキストベースなのでGitで管理しやすいというメリットもあります。
実際、現在でも「Markdown+生成AI」という組み合わせでMarpを使う方法は紹介されています。
MarpでMarkdownからスライドを作成しよう|JBS Tech Blog
ただし、デザインを細かく作り込もうとするとCSSやMarp独自の記法が必要になります。
つまりMarpは、「AIにスライドを作らせる」というより、「AIが扱いやすい形式でスライドを書く」というアプローチでした。
AIスライド生成サービスを使う
もう一つの方向性が、最初からスライド生成を目的として作られたサービスです。
代表的なものとして Gamma や Beautiful.ai などがありました。
そして、私が試した Skywork もそのひとつです。
こうしたサービスでは、
「このテーマについてプレゼン資料を作って」
と入力するだけで、AIが構成、文章、デザイン、画像などをまとめて生成してくれます。
コードを書く必要がないので、PptxGenJSやMarpとはかなり違います。
**「スライドを作るための仕組みを自分で用意する」のではなく、「スライド作成サービスに仕事を丸ごと任せる」**という方向です。
これは非常に楽でしたが、仕事で使うとなると、
- 自社のテンプレートを使いたい
- 既存のPowerPointをベースにしたい
- 細かいところはPowerPointで編集したい
- 社内資料として決められた形式にしたい
といった要求が出てきます。
「きれいなスライドを作る」ことと「自分が普段使っているPowerPoint資料を作る」ことには、まだ少し差がありました。
そして、最近はClaude Cowork
ここで最近かなり印象が変わりました。
Claude Coworkに普通に依頼するだけで、PowerPointを作ってくれる。
例えば、
この内容をもとに、社内向けの説明資料を10枚程度で作ってください。
読み手は技術者ではありません。
まず結論を示し、その後に背景、課題、解決策、今後の方針という流れにしてください。
PowerPoint形式で作成してください。
といった具合です。なんならもっと雑なプロンプトでもそれっぽく作ってくれます。
MarpならMarkdownを書き、Skyworkならサービス上で生成し、場合によっては別途PowerPointに変換していました。
それが今では、かなりの部分をClaudeに任せられるようになってます。めでたしめでたし。
いかがでしたか? 🙄
振り返ると、プロンプトを工夫する → コードから生成する(PptxGenJS) → Markdownから生成する(Marp) → 専用サービスに任せる(Skywork、Gamma) → Claude Coworkに直接頼む、という変遷でした。
昔は「どうやってAIにスライドを作らせるか」だったのが、今は「この資料で何を伝えたいか」だけに。
もちろん内容や数字のチェックは相変わらず人間の仕事ですが、「作り方」に頭を使わなくてよくなったぶん、資料の目的や伝え方に集中できるようになった。これが一番大きな変化だと思います。
便利な世の中だなー